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May 10 2021 Kumo(cloud) Diptych NYC
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Year: 2021
Medium: ink on aluminum composite
Dimensions: diptych, 153.7 x 189.2 cm (60 x 1/4 x 74 1/2 in.) overall
Acquired from MAKI Gallery, 2022
日本とアメリカにルーツを持つアンドウにとって、両者の文化圏においてさまざまなギャップがあることが作品制作の上で前提となっている。テキストであってもアートであっても、それが作られるバックグラウンドが異なれば全く同じものを表すということはない。例えば両者の言語で「雲」と「Cloud」はおよそ同じものを指していることは明らかだが、文字も音も違えば、慣用表現などにおけるニュアンスも異なるだろう。アンドウはそうしたわずかな差異に感応する。ではその両者の間に跨っている名前のない帯域をどのように認識するか。それはまさに雲を掴むような話だ。本作はアンドウの代表的なシリーズとなっている「Kumo(cloud)」の一作となる。鈍い光沢のアルミニウムに雲の描画が重ねられている。大気中の水滴あるいは氷晶のまとまりである雲は常に形を移ろわせ、これが雲であると同定できる形象を持たない。私たちが雲というものを想起するとき、それは漠然と空に浮かぶ一叢のそれというより他ない。形在って無きものをいかに表象するのかということが問われる。本作において、アンドウはこの在りつつ無いという不定形性をアルミニウムの反射に置き換えて表している。金属の色も鏡のように真に何色であると認識されることはなく、可視光線のある領域における強い反射として相対的に現れてくるものだ。本作においても、鑑賞者の立ち位置によって雲の明暗が常時反転する。アルミニウムによる白光の中で移ろう雲は、私たちに世界にある様々なものの認識についてを改めて問う。