IBUKI MINAMI
南依岐

YNYNG-TOR-RNHD-13taPD-21KG/INS-5
1995年東京都生まれ。2019年Academy of Art University(サンフランシスコ)を卒業。自ら編み出した「アルゴリズム」によって絵画を生成する。南は10代のころから制作表現のためのアルゴリズムを構築し続けているという。抽象表現において、画家が何から何をどのように「抽象」しているのか、その心の働き自体は目に見えるものではなく鑑賞者は画面からその表象を読み取るしかない。たとえ、無意識的な制作が可能な構成主義的やオートマチズムの作品であっても、人の成すものは体と心を介して表出するものなのだから同様である。一般に作家がコンセプトと称する制作に対する思考や概念に関するテクストは、絵画作品の表面には現れてこない。作品とはそのコンセプトをベースとし、作家の内面で沸き起こる感情や思考の「結果」として提示されるものだからである。南にとって、作品とは「アルゴリズム」であるというのであれば、それは作家の内面で起こっている現象そのものをまずはコード化する必要がある。本来的には叙述したり、記号化することの難しい複雑な人間の心理というものを仮にコード化できるとすれば、それは学問や宗教が未だなし得ていない、心を同定するということにもなるだろう。
比較して考えればより明確になる。例えばAIによる絵画生成技術が人のクリエイティビティに迫るかどうかを目的としているのに対して、南の作品は抽象表現を生成する人の心の働きがいかなるプロセスを経て結果へと到達しているのか、即ち「アルゴリズム」としての絵画を提示し得るか否かという極めて人間的なる問いである。