YUICHIRO MORIYAMA
守山友一朗
1984年熊本県生まれ。2012年パリ高等美術学校(Beaux-Arts de Paris)修士課程修了(DNSAP)。守山の絵画は薄く溶いた絵具の淡い色彩と、ほとんど塗り重ねをしないことによる明るさを常に画面に湛えている。水面を光が跳ねる様子、草花が風にゆらめいて香りを放つ様子。14年にもわたるフランス滞在中に目にした各地の風景の一瞬を丁寧に切り取っている。景色を写真に収めるかのように、守山の視界はやや遠くから対象となる景色へ向けて広がっている。画面の中に描かれた何か特定の対象物への親密さよりも、自身はそっと息を潜めながらその風景や空間全体を保存しようとしてるようだ。それ故か、構図が俯瞰するような視点を取っていることが多い。人の目の高さよりも少し遠く、浮遊するように世界を見下ろしている。日常の景色が守山の絵画の中で少しだけ非日常性を獲得しているとすればこの常に達観したような視線の置き方にあるかもしれない。また、絵具を塗り重ねないことによって濁りのない明るさが得られるだけではなく、絵具の隆起という視覚的な刺激が少ないためか、絵画空間の中での遠近感の深度がより浅く感じられて、まるで近景と遠景が混ざり合うようである。それによって、抽象絵画のように錯覚することさえあるだろう。かつての印象派やロマン主義の作家たちと同じように、決して劇的なものや視覚的な強い愉悦を描くのではなく、さりげない一瞬の美しさを素朴に表現していることが守山の絵画に普遍性を与えている。2020年には東京オペラシティアートギャラリーにおいて個展「Project N80 MORIYAMA Yuichiro」を開催、フランスでの個展やその他国内外の展覧会多数。