HIRAKU SUZUKI
鈴木ヒラク
1978年宮城県生まれ。2008年東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。「描く」と「書く」の境界に干渉し、ドローイングを拡張する作家。自身の線を「チューブ」と呼称してメディアやジャンルを横断し、その両者の間の隔たりを開通させるための線として位置づけている。鈴木の線は記号的に見えるが、実際には特定の意味を有してはおらず文字と図の中間体の表象になっている。音楽や考古学に親しみ、文字と音と異物と絵画は鈴木の中で原始的な混ざり方をしているように思われる。音楽的なアプローチとしてはカットアップやサンプリングの思考の影響はかなりあると見て良い。また考古学的アプローチとしては遺構や残留物から情報を遡って図像を構築していくような手法が頻繁に見られる。シルバーに光の象徴を見出している鈴木は、作品にしばしば銀色のスプレーペイントや鏡などを用いて光の痕跡のような線描を画面に取り入れている。鈴木が土の中に埋めておいた落ち葉が葉脈だけになり、再び鈴木の手によって地表に露わになる。鈴木の線とはそういう既存の概念を逸脱したものも含むのである。線の意義やドローイングの領域を拡張するアーティストと呼ばれる所以である。2005年、ショーのために来日していたアニエス・ベーに偶然見出されランウェイでのコラボレーションに急遽抜擢される。それ以来長い親交が続いている。ファッションブランド、音楽家、詩人などとのコラボレーションも多数、国際芸術センター青森での個展(2015年)、MOTアニュアル2019「Echo after Echo:仮の声、新しい影」(2019年, 東京都現代美術館)、「生の軌跡ーTraces of Lifeー」(2021年, アーツ前橋)など国内外での展示多数。東京芸術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス准教授。