SHINPEI OKAWA
大川心平

子は宙を撃ち、鳥が高く鳴く / The child shoots in the air, the bird sings high
1983年東京都生まれ。2009年、東京藝術⼤学⼤学院美術研究科油画修了。記憶から呼び醒ますイメージを描く。架空の場面であったり、先行する美術作品の引用であったり、過去の事実、ふと思い出された脈絡のないこと、それらが渾然一体となっていく。構図もどこか調和と破綻を重ね合わせたようである。紙を破り、それをトレースして絵の構図を決めるきっかけとすることもある。一つの絵画空間にさまざまなモチーフが描かれていることで、目の落ち着けどころを見失ってしまう。視線を着地させられないまま絵画の上を視線が彷徨うに任せていると次第に、当初は散漫として見えていたそれぞれのモチーフ同士に何らかの関連性や、意味的な符号が起こり始める。古典の絵画は象徴や寓意に満ちているので、絵画を「読む」と言う行為が可能になるが、大川の作品は、「読む」つまり作者と鑑賞者で共有できる記号的要素を探すという鑑賞者にとっての手がかりを否定することから始まり、途方に暮れたあたりから今度は絵画の方が自ずとその独自の文法を語り始めるのである。帝京⼤学(東京)、光州市⽴美術館(韓国)に作品が収蔵されている。