YUNA OGINO
荻野夕奈

p-240123-1
1982年東京都生まれ。画家の父の影響から小学校三年生時から油絵を学び始め、女子美術大学付属高校を経て東京藝術大学へ。2007年、東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。花、蝶、近年では人物も対象としているが、写実的な描写は極めて限定的に留まる。画面全体は抽象的な構成になっているものの、要所に具象性が残されているためにモチーフが何であるかは比較的容易に読み取ることはできる。例えば、花を題材にしたものであれば、花弁は比較的形象を明らかに残したままに描かれていることが多いが茎や葉などはほぼ消失しており、絵画の中では重力など存在しないかのように花々が散らばり、互いに溶け合い混ざり合うようにして画面を埋め尽くしている。抽象という言葉は、具体性の中からより重要性の高いものを抜き出して一般化することを言う。荻野の絵画は、人間が何かを視認する際多かれ少なかれ内面で行なっているであろう抽象化を可視化している。仮に人間に抽象化する能力が備わっていなければ「花」というカテゴリで目の前の一輪を認識することができず、無限に特殊な個別の存在としてしか認識し得ないだろう。荻野の作品においては、花は個性を消し去られ、人物はその身体性が何も意味していない。その存在の周りにまとわりつくあらゆる属性を削ぎ落とし、花、人というものの核を剥き出しにするのである。